2011年8月14日日曜日

平成24年度採択対象中学歴史教科書七社の比較その1


平成24年度採択対象中学歴史教科書に関する意見



その1

日露戦争について各教科書の比較



≪日露戦争の記述は適切か、この戦争の本質を説明しているか≫





目  次



00:【評価の基準】                               p.2



0:【評価の結果】                                      p.3



1:【年号の表記】                                      p.5



2:【日露戦争の説明の分量】                            p.6



3:【日露戦争の原因】                                  p.10



4:【国力の差を説明しているか】                        p.17



5:【日露戦争のコラムと資料はどうか】                  p.19



6:【日露戦争の描写】                                  p.26



7:【日本海海戦の結果の説明】                          p.30



8:【日露戦争での登場人物の数】                        p.31



9:【満洲を中国東北部と書いていないか】                p.39



10:【日露戦争の影響を書いているか】                   p.41



11:【日露戦争で、日本が良い影響意を与えた国と人物】   p.52



以上

評価の基準





1:教育基本法、学習指導要領に従っているか



2:歴史的事実に反する嘘を書いていないか



3:日本の立場で書いてあるか、他国の立場で書いていないか



4:日本史として当然書くべき事を省略していないか



5:特定のイデオロギー、特にマルクス主義階級闘争史観で書いていないか



6:日本を貶めるような反日・侮日の記述はないか





以上の基準で、5点満点で評価した。



歴史的事実に反する嘘を書いたり、日本を貶めたり、明らかに他国の立場で書いてある場合などは、マイナス点を付けた。







 評価の対象は、中学歴史教科書を作っている次の7社です。



自由社                 276ページ

育鵬社         262ページ

日本文教出版           279ページ

帝国書院               266ページ

教育出版               268ページ

東京書籍               276ページ

清水書院               287ページ



順不同。以上



本  文

【評価の結果】



結果を先に記しますます。教科書会社7社の評価結果は、次の通りです。



《評価の結果集計表》

<><><><><><><><><><><><><><><><><><> <><><><><><><><><><><><><><><><><><>








教    育
年号の表記
3
5
0
0
0
0
5
日露戦争の説明の分量
5
4
0
0
3
1
1
日露戦争の原因
4
5
0
1点
3
0
3
日露の国力の差
5
2
0
2
0
0
3
コラムと資料は十分か
5
5
0
2
2
0
0
日露戦争の描写
5
5
-5
-2
2
2
-2
日本海海戦の結果の説明
5
5
-3
-3
3
-3
3
日露戦争の登場人物の数
5
5
-5
2
1
-2
-1
満州か中国東北部か
5
5
3
3
5
5
5
日露戦争の影響
5
4
3
5
3
2
5
影響を受けた国・人物
5
3
5
2
2
1
2
合 計
52
48
-18
2
21
-4
-10





日露戦争に関しての結論



日露戦争の内容を一番詳しく書いて、内容もしっかりしているのが自由社。その次に育鵬社

自由社育鵬社は、別にコラムを設け、その内容も共に素晴らしい。



 他社は、分量も少なく、コラムも無い。また、その内容は、日本が反戦論者の声を無視して戦争を始め、戦死者を多くだし、戦費も嵩み、税金も増えて国民が苦しんだという悪い面だけを強調して、良い面をほとんど書かない。



ただ、教育出版が、反日ながらも多少日本の良い点を書いている。



帝国書院東京書籍は、評価が低く、日本文教出版、清水書院2社はまったく評価できない。



特に問題なのは、以下の点である。



清水書院が、西暦だけを使い、日本の年号を使っていない。(日露戦争の項で)



 日本文教出版の日露戦争の説明が異常に短く、登場人物は反戦論者ばかりで、軍人や政治家が全く出ない。



東京書籍清水書院が、満州という言葉を使わず、中国東北部としている点。



帝国書院清水書院が、日露戦争後、日本が帝国主義になったとしている点。



 日本文教出版が、日露戦争の日本の勝利が世界に与えた影響、即ち、ロシアの圧政に苦しむ東欧や、欧米植民地支配に苦しむ中東・アジア諸国に独立への希望と勇気を与えた事を完全に無視している点。





 結果は以上ですが、これは日露戦争だけの評価であり、古代から現代までの総合的評価を見なければ、最終的に、どの教科書が一番良いかは言えない。



 これから、古代から現代まで約80の歴史項目について、7社の教科書を比較評価して行く予定です。比較する歴史項目は別紙「比較項目」をご覧ください。



 今回は、日露戦争の項の比較評価が終わりましたので、参考の為に提出いたします。





では、本論に入ります。



日露戦争に関して、以下、各項目ごとに検討して行きます。



1:【年号の表記】



 14世紀の終わり、李成桂が高麗王朝を倒して建てた李氏朝鮮は、その後500年間、明・清の正朔を奉じて、その属国となり、年号は明・清の年号を使い、一度も自国の年号を使わなかった。



 朝鮮(韓国)が独自の年号を持ったのは、日清戦争の後、独立国・大韓帝国になってからである。



 我々は、これを他山の石とすべきではないか。



 さて、日露戦争の項で、教科書各社は、年号の表記をどう書いているか。



 例えば、日露戦争を1904(明治37)年のように、日本の年号を西暦と併記して使っているか。それとも1904年と、西暦のみか。順次見て行く。





自由社        評価  3

一部で省略しているが、基本的に日本の年号を西暦と共に併記している。

       

育鵬社        評価  5

 すべて日本の年号を西暦と併記している。7社の中で一番評価出来る 

      

日本文教出版     評価  0    

帝国書院       評価  0

教育出版       評価  0点           

東京書籍       評価  0

 上記4社は、章の頭に日本の年号を併記し、その後は省略して、西暦のみ。



これでは中学生が日本の元号を覚えられない。元号を使わない事は日本の伝統文化を壊す事になる。日本の元号を軽視する態度は評価できない。



清水書院       評価  -5

唯一清水書院だけが、西暦のみを使用。日本の年号を使っていない。



我が国の元号を敢て無視する清水書院は、反日的イデオロギーが強すぎるのではないか。歴史教科書失格である。全く評価できない。   

大化元年(皇紀1305年、西暦645年)、大化の改新で、日本最初の元号「大化」が定められて以来、今日まで連綿と続いてきた日本の伝統的な元号を無視する態度は、「伝統の継承」を謳った教育基本法の精神に反する。





また、日清、日露戦争に関して言えば、明治政府が決定した戦争の正式名称は

「明治二十七乃至八年戦役」(日清戦争)

「明治三十七乃至八年戦役」(日露戦争)

であり、日清戦争、日露戦争は通称でしかない。この点でも我々は日本の年号(元号)を大切にしなければならない。









2:【日露戦争の説明の分量】



 教科書各社は、日露戦争にどれだけのページや行数を使っているか。



 学習指導要領は「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」ことを目標にしているが、日本史の大事件の一つである日露戦争に対して、どれだけの分量を使って説明しているか。

これを見れば、各教科書会社が、どれほど「我が国の歴史に対する愛情」を持って教科書を作っているかが判る。





自由社     評価  5

ページ数    6ページ (内、コラム 2ページ)

《本文の行数》

義和団とロシア       12

日英同盟          14

日露開戦           6

奉天・日本海海戦      10

ポーツマス講和会議     17

世界を変えた日本の勝利    8

             小計      67

コラム  2ページ      77


      合計     144
日露戦争の経緯(本文)   10
       (コラム)  24
      合計      34


育鵬社     評価  4点
ページ数    4ページ (内、コラム 1ページ)
《本文の行数》
三国干渉と日英同盟       20
日露開戦と日本の勝利      26
             小計        46
コラム  1ページ       66
      合計        112

日露戦争の経緯(本文)     12
      合計        12


日本文教出版     評価  0点
ページ数       2ページ (コラム無し)
《本文の行数》
帝国主義国に分割される中国        8
日露戦争                19
ポーツマス条約と満州経営        14
             小計            41
コラム                 無し       
      合計            41

日露戦争の経緯(本文)         5
      合計            5


帝国書院       評価  0点
ページ数       2ページ (コラム無し)
《本文の行数》
義和団の抵抗               5
日露戦争                28
条約改正の達成              4
             小計            37
コラム                 無し       
      合計             37

日露戦争の経緯(本文)         8
      合計            8


教育出版       評価  3点
ページ数       4ページ (コラム無し)
《本文の行数》
分割される中国              7
義和団事件               11
日英同盟の成立             14
日露戦争の始まり            12
戦争と国民生活             15
戦争の講和と影響            15
             小計            74
コラム                 無し       
      合計            74
日露戦争の経緯(本文)         8
      合計            8


東京書籍       評価  1点
ページ数         2ページ (コラム無し)
《本文の行数》
義和団事件                14
日露戦争                20
日露戦争後の日本             7
             小計            41
コラム                 無し       
      合計            41
日露戦争の経緯(本文)         10
      合計            10

清水書院       評価  1点
ページ数         2ページ (コラム無し)
《本文の行数》
ロシアと日本の対立            17
日露戦争の動向             10
ポーツマス条約             18
             小計            45
コラム  無し       
      合計            45

日露戦争の経緯(本文)         10
      合計            10


ページ数、行数とその評価の一覧表は次の通り。

<><><><><><><><><><><><><><><><><><> <><><><><><><><><><><><><><><><><><>







日露戦争総ページ数(含コラム)
4
2
2
4
2
2
コラムページ数
1
0
0
0
0
0
日露戦争の総行数
144
112
41
38
74
41
45
日露戦争の経緯説明
34
12
5
8
8
10
10
評 価
5
4
0
0
3
1点
1点

7社の教科書のうち、自由社が一番多くページ数を使っている
その次に育鵬社が多くの分量を使っている。
自由社育鵬社がコラムを設けている事は、大いに評価出来る。

その次が教育出版で、ページも多く、行数も多い。

その他の4社、東京書籍、日本文教社、帝国書籍、清水書院は、ページ数も行数も非常に少なく、非常に劣る。
3:【日露戦争の原因がきちんと書かれているか】
 
 日本海に面したウラジオストックは、ロシア語で「東方を征服せよ」という意味である(自由社p.184脚注)。

これからも明らかなように、日露戦争の原因はロシアのアジア侵略であり、極東アジアを征服しようとするロシアに対して日本が国家の存亡を賭して戦った自衛戦争が日露戦争であった。

そのことが教科書に書かれているか。


 振り返れば、西郷隆盛は維新政府成立後、「ロシアはいずれ満州、朝鮮半島を経て日本に迫ってくる。これこそ第二の元寇であり、日本にとっては生死の問題になる」と懸念を表明している。


また、開戦前、満州総参謀長児玉源太郎の所に、財界の大立て者渋沢栄一が日露戦争について意見を聞きに来ている。

『「日本としては万死に一生を期して戦う他、残された道がない」
 とまで言うと、児玉は両眼からおびただしい涙を流した。明治後三十数年にわたってようやく今日の域に達した日本国は、この一戦であるいは滅びるかもしれない。その事を陸軍作戦の全てを担当する児玉自身が言っているのである。

 渋沢も、泣きだした。
「児玉さん、私も一兵卒として働きます」
 といい、戦費調達にはどんな無理でもやりましょうといった』
(司馬遼太郎『坂之上の雲2』文芸春秋p254


伊藤博文は、アメリカに支援を求めるため金子健太郎に渡米遊説を依頼した。それを辞退する金子に伊藤は
『今度の戦争で成功すると思う者は一人としていない。事ここに至れば国を賭してでも戦うの一途あるのみ。かく言う伊藤も、わが陸軍が満州から追い払われ、海軍が対馬海峡でことごとく沈められ、露軍が海陸から我が国に迫った
ときは、身を士卒に伍して鉄砲を担いで、山陰道から九州海岸で命の限り露軍を防ぎ、一歩たりとも日本の土地を踏ませぬ決意である。君も成功不成功を問わず、あらん限りの力を尽くして米国人が同情を寄せるようにやってくれ』
(金子健太郎『日露戦役秘録』p84)


 当時の日本人で、ロシアに勝てると思っていた人物はほとんどいなかった。そして、この戦いに負ければ、日本が滅びることは明らかであった。


 東郷元帥の連合艦隊全将兵に対する訓示(戦闘開始時に揚げられたZ旗)

『皇国の興廃、この一戦にあり』

の言葉通り、まさしく負ければ国が亡びる一戦であった。

そのことを教科書が書いているか。
 



<国が無くなると言う事>

蛇足ながら、平成41992年、ソビエトが崩壊した時、14の国が独立した。14ヶ国がソ連に占領されていたのである。この事がロシア、あるいはソ連が侵略主義国であった事を雄弁に物語っている。

日本の北方四島は、ソ連が、昭和20815日、大東亜戦争(太平洋戦争)の終わった後、国際法に反して占領した。そして、未だに還って来ていない。ロシアの領土侵略政策は現在も終わっておらず、日露戦争は今も続いているのである。

そして今、日本は、北方領土をロシアに、竹島を韓国に盗られているだけであるが、チベット、ウイグル、南モンゴル、満州は、中華人民共和国に国ごと奪われ、国そのものが消えてしまった。これが現在ただ今の現実である。



さて、各教科書の「日露戦争の原因」の本文記述は以下の通り。

<各社教科書の本文>

自由社
要旨:ロシアの軍事力増強に太刀打ちできなくなるから、戦争をした。

『日本の10倍の国家予算と軍事力を持っていたロシアは、満州の兵力を増強し、朝鮮北部に軍事基地を建設したこのまま黙視すれば、ロシアの極東における軍事力は、日本が太刀打ちできないほど増強されるのは明らかだった。政府は手遅れになることを恐れて、ロシアとの戦争を決意した』P.185

『日露戦争は、日本の生き残りをかけた戦争だった。日本はこれに勝利して、自国の安全保障を確立した』p.187

『日本国家の運命をかけた日露戦争』(コラム)p.188


育鵬社
要旨:ロシアの軍備増強で、わが国の存立が危機を迎えたから、戦争をした。

『ロシアの極東での軍備増強をこのまま黙認すれば、わが国の存立の危機を迎えると考えた政府は開戦を決意し、1904(明治37)年2月、日露戦争がはじまった』p.173


日本文教出版
要旨:南下してきたロシアと、朝鮮へ勢力を伸ばそうとした日本が対立したので、戦争が始まった。

『義和団事件後、ロシアは満州(中国東北部)に軍隊をとどめ、清や朝鮮への影響力を強めました。そのため、朝鮮へ勢力を伸ばそうとしていた日本は、ロシアとの対立を深めました。(略)
日本は、満洲はロシアの、朝鮮は日本の支配下に置くという交渉を行いましたが、両者の対立は大きく、1904年、日露戦争が始まりました。』p190-191

 
帝国書院
要旨:ロシアが満州を支配し、日本がそれを阻止しようとして、戦争になった。

『ロシアは、建設中のシベリア鉄道が義和団によって破壊されたことを理由に、「満州」(中国東北部)へ大量の軍隊を送りました。そして、義和団事件後も長くとどまり、「満州」を勢力下におこうとしました。それを阻止しようとする日本とイギリスの利害が一致し、1902年日英同盟が結ばれました。ロシアとの交渉も行われましたが決裂し、日本では、日英同盟を後ろ盾としてロシアとの開戦を主張する声が強くなりました。戦争反対の声もありましたが、1904年、日露戦争がはじまりました。』p.176


教育出版
要旨:ロシアに、日本の朝鮮の支配権を認めさせようとして、戦争になった。

「満州を占領したロシアは、清との条約で兵を引き上げることを約束しましたが、その期限が来ても撤兵せず、韓国にも軍事施設を作り始めました。危機感を深めた日本政府は、外交による交渉で、満州でのロシアの権益を認める代わりに、韓国に対する日本の支配権を認めさせようとしました。(略)
 結局、ロシアとの交渉はまとまらず、1904(明治37)2月、日本軍はロシアの軍事拠点である旅順を攻撃し、中立を宣言していた韓国の仁川に上陸して、日露戦争が始まりました。」p.172


東京書籍
要旨:満州、韓国と勢力拡大するロシアに対して、韓国での優位を確保したい日本がロシアに抵抗して、戦争になった。

『ロシアは(義和団)事件ののちも大軍を満州にとどめて事実上占領し、さらに韓国への進出を強めました。
 ロシアの勢力拡大を見て,韓国での優位を確保したい日本と、清での利権の確保に日本の軍事力を利用したいイギリスとは1902年に日英同盟を結び、ロシアに対抗しました。社会主義者の幸徳秋水やキリスト教徒の内村鑑三などは開戦に反対したしたが、新聞などが主張する主戦論が世論を動かし、政府も開戦の準備を進めました。19042月、日露戦争が始まりました。』p.164
  

清水書院
要旨:国力の違いを心配して日本が開戦を回避するため、ロシアが満州を、日本が朝鮮を勢力圏にするという妥協案を提案したが、ロシアが拒んだから、戦争に踏み切った。

『日本は、国力の違いを心配してロシアとの開戦を避けようとして、中国東北部をロシア、朝鮮半島を日本の勢力圏にするという妥協案をロシアに提出した。日本の妥協案をロシアが拒むと、1904年、日本はロシアと戦争に踏み切った(日露戦争)』p192

以上、引用終わり。

 7社のうち、日露戦争が我が国にとって「国家存亡の戦い」であることを書いているのは、育鵬社自由社の2社のみである。

他の5社が、我が国の「国家滅亡の危機」を書いていない事自体が、日本の教科書として異常である。

帝国書院、教育出版2社は、欄外に小さく、東京帝国大学7博士の意見として「日本はその存立をも危うくしてしまう」という言葉を載せているが、これでは中学生は気付かない。やはり、きちんと本文に書かないといけない。

 いわゆる「日本が帝国主義的な侵略国であり、悪い国であった」とする左翼史観からすれば、日露戦争が日本の自衛戦争であった事実は、都合が悪るく、隠したい歴史なのであろう。

自分の都合で歴史の真実を隠してはならない。子供に嘘を教えてはならない。


 育鵬社は、開戦の理由として本文に「国家存亡の戦い」と説明しており、評価できる。 

育鵬社   評価 5点


自由社は、開戦の所で、「ロシアの軍事増強に日本が太刀打ちできなくなるか



ら」、と書いているのみで、その結果を書いていない。軍事力で太刀打ちできなければロシアに征服されて、日本が滅ぶという、明治の日本人が一番恐れた事を書いていない。

しかし、自由社は、後のコラムで、『日本国家の運命をかけた日露戦争』、また、日露戦争後の「世界を変えた日本の勝利」の所で、『日露戦争は、日本の生き残りをかけた戦争だった』(p.187)と書いてある。



書くのであれば、開戦の所で書かなければ、日本が戦争に踏み切った理由が分からない。残念ながら自由社は書く場所を間違えている。

 

なお、これは重要な事であるが、自由社は、ロシアが『朝鮮北部に軍事基地を建設した』という事実(龍岩浦事件)を指摘し、ロシアの侵略を具体的に示している。この点は評価できる。



この「龍岩浦事件」を指摘しているのは、自由社教育出版2社だけである。しかし、2社とも「龍岩浦事件」という具体的な事件名を入れていないのが残念である。本来なら事件名を入れるべきである。



龍岩浦事件:帝政ロシアが、清国の満洲と大韓帝国の国境を流れる鴨緑江の満洲側安東県に軍隊を駐留させ、鴨緑江を横切って通信線を敷設し、鴨緑江河口左岸、韓国側の龍岩浦に侵入し、砲台を構築し、軍港と軍事基地を建設しようとした事件。



自由社   評価 4点





 日本文教社東京書籍教育出版は、日露両国が朝鮮の支配権をめぐって、また、帝国書院は、満州の支配権をめぐって戦争をした、即ち、4社とも、領土の争いが日露戦争の原因であった、としている。



これでは、日本も侵略国家であったと中学生が思ってしまう。評価できない。





帝国書院、教育出版は、欄外で、主戦論の東京帝国大学7博士の『この機会を逃せば、国の存立を危うくしてしまう』との意見を載せているので、この点は評価できる。
しかし、これは言い訳的であり、書くのであれば、欄外ではなく、本文にき
ちんと書くべきである。

 評価: 帝国書院        評価 1点


また、特に日本文教社東京書籍の2社は、我が国が存亡の危機に追い込まれた事に一言も触れていない。これは歴史的事実の隠蔽である。評価できない。

評価:日本文教社      評価  0
東京書籍       評価  0


教育出版は、ロシアが『韓国にも軍事施設を作り始めた』という事実(龍岩浦事件)を指摘し、ロシアの朝鮮領土内への軍事的侵略を具体的に示している。この点、評価できる。

既に書いたが、この重要な事実(龍岩浦事件)を指摘しているのは、教育出版自由社2社だけである。育鵬社でさえ指摘していない。

東京書籍は、『ロシアは・・・さらに韓国への進出を強めました』と書いているが、これでは何の事を言っているのか分からない。

評価: 教育出版        評価 3


清水書院も、「国家存亡の危機」を書いていない。評価できない。

しかし、清水書院は、7社の内で1社だけ、『日本の妥協案をロシアが拒むと1904年、日本はロシアと戦争に踏み切った』として、日本の和平提案をロシアが拒否した事を指摘し、ロシア側に戦争の責任がある事をはっきりさせている。この点は評価できる。

これは日本が侵略国で無いことの証である。
日本の立場からこの点を指摘しているのは清水書院1社だけで、評価できる。育鵬社自由社もこの点は書いていない。

評価:    清水書院    3   


4:【日露の国力差を説明しているか】



 日露戦争は、大国と小国との戦争であり、世界では誰も日本が勝つとは思わなかった。ロシアの国力は日本の10倍以上、当時最大の陸軍国、バルチック艦隊は当時、最新鋭戦艦4隻を擁し、世界最大・最強レベルの海軍であった。



隔絶した軍事力を持つロシアに対して、勝ち目のない戦争に追い込まれた日本は、祖国を守るため、まさに背水の陣で死力を尽くして戦った。

この事実を日本の子供たちに教えなければ、日露戦争の意味が分からない。



各社の評価は次の通り。



自由社    評価  5

ロシアと日本の国力の差を本文に書いているのは、自由社のみである。



 自由社は、『日本の10倍の国家予算と軍事力を持っていたロシア』と本文に国力の差を説明し、さらに日露軍事力の比較表を載せているので評価できる。





育鵬社    評価  2点

育鵬社は、日露の国力差を書いていないが、日露の戦力比較表を載せている。





帝国書院   評価  2点

帝国書院は、巨人のロシアに挑む小さな日本人の風刺画を載せて、大国ロシアに小国日本が勝ち目の無い戦いを挑んだ日露戦争の性格を一目で中学生に分かるようにしている。評価できる。





日本文教出版  評価  0点

教育出版    評価  0点

東京書籍    評価  0点

 日本文教社教育出版東京書籍は、日露の国力、軍事力の比較を載せていない。それゆえ、大国ロシアに対して小国日本がどれだけ悲壮な戦いをしたかが、中学生には分からない。



豊かな日本しか知らない今の中学生には、当時の日本もロシアと同じく大国であったと勘違いしている中学生も多いのではあるまいか。





清水書院    評価  3

 清水書院は、自由社のように具体的な数字は載せていないが、『日本は、国力の違いを心配してロシアとの開戦を避けようとして』と、国力の違いを書き、また『日本が総力を挙げて、かろうじて勝つことの出来た戦争であった』(p.193)と書いているので、それなりに評価できる。



  しかし、清水書院は、欄外で『戦死傷者は38万人。古い墓地を調べると、この戦争で亡くなった人の墓が多い事が分かる』(p.193)として、日露戦争に悪いイメージを与えようとしている。反日的、自虐的と言わなければならない。



 戦死者が多かった事は事実であるが、そもそもロシアの軍事侵略が無ければ、これらの人々は死なずに済んだ、という事を子供たちに教えなければならない。原因はロシアであるという事を中学生に教えなければならない。



 また、弱肉強食の世界では、国の独立を守るためには尊い犠牲がいるのだ、という冷厳な現実も中学生に教えなければならない。



 清水書院に足りない所は、『国を守るために命を捧げた人々を忘れるな』という一言である。





 また、日本文教出版教育出版東京書籍は、日露の戦力比較を無視して、日清戦争と日露戦争の国内比較をしている。



日清戦争より日露戦争の方が軍事費、動員兵力、戦死者が多かった事を強調して、日露戦争がひどかった事を印象付けようとしている。



そして、増税という重荷を担いで苦しむ男性の漫画を載せて、日露戦争が国民を苦しめたというイメージを中学生に持たそうとしている。(清水書院もこの税金を担ぐ男の漫画を載せている)



これでは、当時が弱肉強食の帝国主義時代であったという世界的背景を無視して、問題を日本国内に限定し、「日露戦争が国民を苦しめた悪い戦争だった」という印象を中学生にもたそうとする自虐史観である。




0 件のコメント:

コメントを投稿