2011年8月15日月曜日

平成24年度採択対象中学歴史教科書七社の比較 その4



p.35

清水書院    登場人物 3人    評価  -1



東郷平八郎(欄外)、与謝野晶子(欄外)、ネルー(欄外)



清水書院は、登場人物が余りに少ない。東郷郷平八郎は載るが、それ以外が与謝野晶子とネルーの2名では、登場人物に偏りがあり過ぎる。



幸徳秋水を外している事は評価できるが、ネルーの日本帝国主義国論を取り上げており、評価できない。その理由は後で説明する。







当時の反戦論について



 日本文教社教育出版東京書籍、帝国書院、清水書院5社は、多少の違いはあるが、幸徳秋水、内村鑑三、与謝野晶子らの反戦論者を出し、あたかも明治政府が彼ら反戦論者の意見を弾圧して戦争を始めたような書き方である。



 しかし、当時はどうであったのか、参考に一文を示す。



日露開戦前に『万朝報』に寄った内村鑑三、幸徳秋水、堺利彦らの非戦反戦論は秋水の『二十世紀の怪物帝国主義』の出版と共に今ははなはだ高く評価されているようだが、当時は彼らの非戦論は政府の弾圧を受けなかった事を竹内好氏が『アジア主義の展望』の中で指摘している。



発禁処分を受けたのは、対露開戦論者内田良平の『ロシア亡国論』であった。なぜなら「時の政府は開戦尚早論者だったからである」と竹内好は書いている」     林房雄『大東亜戦争肯定論』番町書房、214p



 当時、政府から発禁処分を受けたのは開戦論の書物であり、非戦論は弾圧を受けなかった。これは教科書が描こうとする歴史的イメージとは反対である。



このような正確な歴史を教えなければ、中学生が嘘の歴史を学ぶ事になる。







幸徳秋水に付いて



幸徳秋水は、社会主義者、無政府主義者であり、明治天皇を暗殺しようとした大逆事件で死刑になった犯罪人である。そもそも中学校レベルで取り上げるべき人物ではない。



犯罪者である事を隠し、社会主義者・幸徳秋水として本文に載せることは、中学生に、「幸徳秋水は教科書に載るぐらいだから、立派な人だ」という誤った歴史を教えることになる。これは反日左翼イデオロギーであり、公平さを欠いた偏向と言わなければならない。



故に、幸徳秋水の名を挙げた日本文教社教育出版東京書籍3社は、評価できない。





内村鑑三の非戦論について



キリスト教徒内村鑑三は、日露戦争が不正義の戦争だからという理由ではなく、宗教上の理由から反対した。即ち、内村鑑三は人殺しに反対したのである。



それを、内村鑑三が反対したから日露戦争は悪い戦争だ、と中学生に思わせるのは一種の詐欺である。



また、内村鑑三は、日露戦争に反対しているが、日清戦争には賛成していた。彼の一貫性の無い非戦論は、もう少し慎重に扱われるべきではないか。





与謝野晶子の『君死にたもう事なかれ』について。



彼女の詩の1番は



ああ 弟よ 君を泣く

君 死にたまふことなかれ

末に生まれし君なれば

親のなさけは勝(まさ)りしも

親は刃(やいば)をにぎらせて

人を殺せと教えしや

人を殺して死ねよとて

二十四までを育てしや



しかし、彼女の詩の2番はどの教科書も載せていないが、次の如くである。



(さかい)の街のあきびと(商人)の
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君 死にたもうことなかれ



家の跡継ぎだから死なないでくれ、死なれると商売が出来なくなる、という詩である。これも人情であるから、これはこれで良い。



しかし、当時この歌に対して大町桂月が「自分の家の事情で弟に死ぬなという非常に利己的な考え方である」と批判すると、与謝野晶子は、



『私は戦争反対では御座いません。ただただ弟の身を案じるだけの女で御座います』

と弁明している。

(p185『こんな歴史に誰がした』渡辺昇一・谷沢栄一)



 「戦争反対では御座いません」と言っている彼女を、現在の教科書が反戦論に利用している事を知ったら天国の与謝野晶子は驚いている事だろう。





一方、与謝野晶子と正反対の位置にいるのが、乃木希典大将である。



乃木大将は、日露戦争で二人の息子、勝典、保典を亡くしている。

乃木家には他に跡継ぎが無く、故に乃木家は断絶した。



 乃木大将は、二人の息子の死に付いて

「よく死んでくれた。これで世間に申し訳が立つ」

と言ったといわれている。



与謝野晶子の詩を出すなら、息子二人を戦死させた乃木大将の話も出さないとバランスが取れない。それが学習指導要領に言うところの「歴史的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断する」ことではなかろうか。



中学生にもなれば、与謝野晶子と乃木希典の違いが分かる年頃である。両方を示し、中学生自身に考えさせるべきである。



 

 また、育鵬社が、「なでしこ日本史」なるコラムで与謝野晶子を取り上げ、大東亜戦争(太平洋戦争)に出征する息子四朗を励ます歌を紹介している。(p.225



 『水軍の 大尉となりて 我が四朗 みいくさに行く たけく戦え』



 与謝野晶子の別な一面を紹介して、面白い。







《歴史的人物の採用基準》



 では、日露戦争の項で登場させるべき歴的人物の基準は何か。



学習指導要領に、『国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物を尊重する態度を養う』と謳っている。



その人物が「国家の発展に尽くしたか」、日露戦争の勝利にどれだけ貢献したか、言い換えれば、日本の独立を守るために、どれだけ尽くしたか、これが日本の歴史教科書に採用すべき歴史上の人物であろう。



この基準に照らせば、誰を選ぶかは自ずから明らかであろう。



幸徳秋水、内村鑑三、与謝野晶子が日露戦争において何をしたか。



東郷平八郎、乃木希典、秋山真之、小村寿太郎、金子堅太郎、高橋是清、明石元二郎らが日露戦争において何をしたか。



比較すれば、自ずと明らかである。



東郷平八郎は日本海海戦に勝った。

もし負けていれば、日本列島はロシアの軍艦に取り囲まれ、満洲の20万の日本軍は、日本からの補給を断たれ、全滅したであろう。その後は言うも更也。



乃木大将は旅順要塞を落とした。

もし旅順を落とさなければ、旅順にいたロシア太平洋艦隊がバルチック艦隊と合流し、日本海海戦は負けていたであろう。



秋山真之は敵前大回頭の大戦術を編み出た。

通常の作戦では、戦艦の数で勝るバルチック艦隊に日本の連合艦隊は負けていただろう。



小村寿太郎はポーツマス講和会議をまとめた。

講和会議が長引けば、日本軍に10倍するロシア陸軍が、シベリア鉄道で大量に送りこまれ、物量に勝るロシアが消耗戦に持ち込み、兵力に劣る日本は負けたであろう。



金子健太郎はアメリカのルーズベルト大統領を説得た。

金子がいなければルーズベルトはポーツマス講和会議を開かなかった。講和会議が無ければ戦争は長期戦となり、日本は敗れていたであろう。



高橋是清はヨーロッパで戦費を集た。

今は、日本は世界一の債権国だが、明治の日本は借金国であった。そんな貧乏国の国債を外国に買ってもらうのは至難の技であった。戦争をするには金がいる。高橋是清がいなければ、お金がなくて戦争も出来なかった。結果、日本はロシアの属国になっていただろう。



明石元次郎はロシアの背後で撹乱工作を行った。

明石元二郎のロシア国内での活躍が無ければ、ロシアは戦争を継続していたであろう。そうすればポーツマス講和条約も無かっただろう。



このうちの誰を欠いても日露戦争の勝利はなかった。



しかるに、幸徳秋水、内村鑑三、与謝野晶子たちは日露戦争勝利の為に何をしたのか。



彼らの名を載せるぐらいなら、一人でも良い、日露戦争で戦死した兵士の名を載せるべきである。









9:【満州を中国東北部と書いていないか】



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満洲か中国東北部か





評 価
5点
5点
2点
2点
5点
-2
-2





地名で「満州」を「中国東北部」と記述する教科書がある。



「中国東北部」は、現在の中華人民共和国が「満洲」を呼ぶ名前である。昔から「満州」は「満州」であった。当時存在していなかった中華人民共和国の呼び名「中国東北部」を当時の満州に使う事は誤りである。

家康が東京に幕府を開き、竜馬が高知県から脱藩した事になる。



にもかかわらず清水書院は「中国東北部」、東京書籍は「中国」と書く。



東京書籍(欄外)「日露戦争は、中国や朝鮮半島がおもな戦場になりました。」(P.165



清水書院「朝鮮半島から中国東北部に進んだ日本の軍隊は・・・」(p.192)



これらの表現では、中学生は、日本軍が今の中国に攻め込んだと勘違いするであろう。そして、日本の子供達は、日本が中国を侵略したという間違った罪悪感を持つ事になるであろう。これは一種の詐欺である。危険なことである。



満洲と中国(支那)とは、歴史的に別の国であった事を教えないといけない。



これら2社は、「満州」が「中国の固有の領土だ」とする中国共産党のプロパガンダを中学の教科書の中に持ち込んでいるのでは無かろうか。もし中国共産党の宣伝工作が中学の教科書にまで及んでいるとすれば、誠に恐るべき事態と言わなければならない。





括弧つき(中国東北部)の表現に関しては、



自由社が、日清戦争の所で「満洲(現・中国東北部)」(p.183)とし、

帝国書院(p.176)教育出版(p.171)が「満洲(中国東北部)」としている。



「現」が有るか無いかは重要である。



自由社の「満洲(現・中国東北部)」は、昔は満州で、現在は中国東北部であるとはっきり分かる。



しかし、「現」が無い帝国書院教育出版の「満洲(中国東北部)」は、満州が昔から中国東北部と呼ばれていたという解釈も出来る。これは中学生に誤解を与える表現であり、不正確である。

















10:【日露戦争の影響を書いているか】

                              

日露戦争の影響をどう描いているか、各社の本文を引用する。



自由社    評価 5点

『近代国家として生まれて間もない有色人種の国日本が、当時、世界最大の陸軍大国だった白人帝国ロシアに勝った事は、植民地にされていた諸民族に、独立への希望を与えた。しかし他方、黄色人種が将来、白色人種の脅威となると言う黄禍論が欧米に広がるきっかけにもなった』



 自由社は、日露戦争の影響の2つを簡潔に説明している。



その1:白人の植民地になっていた有色人種の諸民族・諸国家に独立への希望  を与えた。

その2:同時に、欧米諸国で、黄色人種が白色人種への脅威になると言う黄禍論が起こった。



自由社は、欄外で、

『ヨーロッパでも、長年ロシア帝国に抑圧されていたフィンランド、ポーランド、トルコの人々は、日本の勝利を熱烈に歓迎した』(p.187

と、フィンランド、ポーランド、トルコの国名を挙げているのは評価できる。





 さらに自由社は、1ページのコラム「世界が見た日露戦争」(p.200)で、外国人5人の声を紹介している。





 長いので、一部だけ引用する。



<引用>



 スエズ運河で孫文が聞いたエジプト人たちの声

『以前は我々東亜の有色人種は、西方の白色人種の圧迫を受け、苦痛をなめた。だが、今度日本がロシアに勝ったという事は、東方民族が西方民族に打ち勝った事になる。日本人は戦争に勝った。我々も勝たなければならない。だから、我々は歓喜する』



インドのネルー

『もし日本が、最も強大なヨーロッパの一国に対してよく勝利を博したとするならば、どうしてそれをインドがなし得ないと言えるだろうか』





ムスタファ・カミール

『日本人こそは、ヨーロッパに身の程をわきまえさせてやった唯一の東洋人である』



<引用終わり>





 見事である。大人にも読ませるべきコラムである。

評価  5点





育鵬社      評価  4点

 『日本への期待と警戒

 幕末以来、我が国の指導者や国民には、欧米列強の植民地にされるという根強い危機感がありました。しかしこの危機感は、日露戦争の勝利で解消し、欧米列強と並ぶ国になったという安心感と自信が生まれました。



 また、同じ有色民族が、世界最大の陸軍国・ロシアを打ち破ったという事実は、列強の圧迫や、植民地支配の苦しみに喘いでいたアジア・アフリカの民族に、独立への希望を与えました。インド独立の父ネルーや、中国革命の指導者孫文は、日本の勝利がアジア諸国に与えた感動を語っています。また、その後アジア各地で起こった近代化や独立を目指す一連の動きにも、この戦争の影響が有りました。日本にはアジア諸国から多くの留学生や独立運動家が訪れ、我が国もまた政府・民間を問わず、彼らを受け入れました。

 

その反面、欧米では、かつてモンゴル帝国がヨーロッパに侵入したように、黄色人種によって白人優位の体制が揺るがされるのではないかと言う黄禍論が広がりました。また、アメリカの世論も、日本に対する警戒感を強めるようになりました』(p.176)

 

育鵬社は、インドのネルーや孫文などの人物名を挙げて、彼らが日露戦争に感激した事を書いている所がよい。

また日本に学ぶためにアジア諸国から多くの留学生や独立運動家が来日した事などを書いていて評価できる。



しかし、育鵬社は、コラムの無い分、自由社より劣る。また、育鵬社は、ヨーロッパや中東への影響を書いていない。

評価  4点





日本文教出版   評価 -3

 日本文教出版は、何も書いていない。



7社中、書いていないのは日本文教出版1社だけである。ひどいの一言。



 日露戦争の世界的な影響を書かない事は、日本の誇るべき歴史を隠蔽する事である。将に反日教科書と言わざるを得ない。



なぜ日本文教出版は、日本の素晴らしい歴史を隠すのか。



これは情報操作である。日本の子供たちが、素晴らしい日本の歴史に目覚めないように目隠し、無理やり無知な状態に置いて、日本の先人たちの残した素晴らしい偉業を隠そうとする反日工作ではないのか。教科書失格である。

     評価  -3





帝国書院      評価 -5点

 『日本が日露戦争に勝利した事は、植民地支配に苦しむアジアの人々に独立への希望と自信を与えました。そのため、アジア諸国から日本への留学・亡命する人が増えました。中でも孫文は、1905(明治38)年、東京で清を打倒するための運動を始めました。



 一方、日本人の間には、日清、日露戦争に勝利することなどで、日本人はアジアの中で優れていると考える人が増えてきました。そして、アジア諸国の期待とは異なり、日本は韓国の植民地化を進め、陸軍・海軍の軍備を増強させるなど帝国主義国としての動きを活発にしていきました』(p.173)





 帝国書院は、前半の説明は穏当だが、後半部で日本を悪者として書いている。しかし、それらは歴史的事実に基づかないイデオロギー的偏見である。



日露戦争後の日本の発展を帝国主義と書いている教科書は、帝国書院と、もう1社、欄外で「日本が帝国主義国になった」というネルーの言葉を引用した清水書院(p.193)2社だけである。評価できない。



なお、この2社以外は、日本に対して帝国主義の言葉を使っていない。



どこが事実に基づかない嘘で、イデオロギー的偏見か、以下検討する。







帝国書院は、『日清、日露戦争に勝利することなどで、日本人はアジアの中で優れていると考える人が増えてきました』と書いているが、



当時のアジアで世界最大の陸軍国ロシアに対抗して、小国ながらも勇気を持って戦い、そして勝ったアジアの国が他にあっただろうか。



欧米列強に対して、独力で不平等条約を改定したアジアの国が他にあったか。



また、アジア諸国で、法治国家として、裁判制度を確立し、警察制度を整え、日本のように治安のよいアジアの国が他にあったか。



 また明治38年当時、全国に高等中学校7校と帝国大学2校を持っていた教育先進国がアジアにあったか。



近代憲法を持ち、議会を持ち、選挙を行っていたアジアの国があったか。



 現在でも、お隣の中華人民共和国は、1949年建国以来、いまだに総選挙をしていない一党独裁の国である。



しかるに日本は明治22年(1889年)衆議院議員選挙をしている民主主義国家であった。この違いを見よ。



「日本人はアジアの中で優れていると考える」のではなく、アジアの中では、当時すでに「優れた国」であった。



 帝国書院の書き方は、「優れていないのに優れている」と、日本人が間違った優越感を持ったと、悪く思わせる書き方である。これでは中学生に誤解を与えてしまう。



 次に『アジア諸国の期待とは異なり、日本は韓国の植民地化を進め、陸軍・海軍の軍備を増強させるなど帝国主義国としての動きを活発にしていきました』と書いている。





<韓国の植民地化>

『日本は韓国の植民地化を進め』と書いているが、日本は朝鮮を植民地にしようとしたのではない。明治維新以来、日本は朝鮮を自立した独立国にしようと努力してきたのである。



しかし、日本の期待に反し、ついに朝鮮は、独力で独立する事はなかった。



 朝鮮に対する日本の目的が植民地にする事ではなかった事は、教育出版が紹介している内村鑑三自身が言っている。

 

『日清戦争で2億の富と1万の生命を費やし、日本が得たものは何か。その目的だった朝鮮の独立は却って弱められ、中国の分割が始まり、日本国民の負担は非常に増え、云々』(p.172)



 これは当時の新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』に内村鑑三が書いた言葉である。「日本の目的は朝鮮の独立だった」と当時の内村鑑三が言っている。



 現に日本は日清戦争に勝った時、朝鮮を日本の領土にしなかった。清の属国であった朝鮮を日本がわざわざ独立させた。そして朝鮮は大韓帝国になった。



下関講和条約の第一条に、「清は朝鮮を独立国と認める」と書いてある。日本が朝鮮を植民地にするのなら、なぜ下関条約の第一条を、「清は朝鮮を日本の領土と認める」、としなかったのだろうか。



 また、昭和20815日、日本は連合軍に降伏した。しかし、その直後、朝鮮は日本から独立しなかった。



 一方、インドネシアは、昭和20817日、スカルノが独立宣言を発表し、独立した。そして、その後再び植民地にしようとして戻ってきたオランダ軍と、4年半の対オランダ独立戦争を戦った。



その時、日本兵2千人が帰国せず、インドネシア独立の為にスカルノと共に戦った。そして半数以上の日本兵が戦死した。



朝鮮が本当に独立を欲したのなら、なぜインドネシアのごとく、すぐに自らの力で独立しなかったのか。



 朝鮮が独立したのは、3年後の昭和23年(1948年)である。日本から独立したのではなく、日本の後を継いで朝鮮を占領したアメリカから独立したのである。



これらの歴史を見る時、残念ながら、朝鮮には自分で独立する意思も実力もなかったと言わざるを得ない。





<アジア諸国の期待>

また、帝国書院の言う、日本が裏切った『アジア諸国の期待』とは何か。

『アジア諸国の期待』とは、欧米の植民地支配からの独立ではなかったか。それは大東亜戦争において、日本が欧米をアジアから追い出して、ビルマ、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ラオス、自由インド仮政府を独立させて、見事にアジア諸国の期待に応えている。





<帝国主義>

 また、帝国書院は、『陸軍・海軍の軍備を増強させるなど帝国主義国としての動きを活発にしていきました』として、軍備を増強する事が帝国主義だと日本を非難している。



国を守る事は、独立国の義務である。



しかるに、軍隊と国防を否定的に書く帝国書院の考え方は、反戦左翼イデオロギーではないのか。



日本が置かれていた当時の弱肉強食の国際情勢を無視して、日本を悪者にし、日本が帝国主義国として外国を侵略し、アジア諸国に迷惑をかけた悪い国だ、とする図式に当て嵌めようとしている。

 たとえば、ここで、ひとつ例に採ろう。



現在、中華人民共和国と我が国の軍事力を比較すれば、次のごとくである。



兵 力  中華人民共和国の人民解放軍    230万  日本の自衛隊  24

艦 艇  中華人民共和国の人民解放軍    950隻  日本の自衛隊 150

航空機  中華人民共和国の人民解放軍  1,950機  日本の自衛隊 430

(平成22年版防衛白書p.5,54)



中国は核兵器を持ち(その一部は日本に照準を合わせており)、航空母艦を造り、尖閣諸島は中国の固有の領土だと言って漁船が我が国の海上保安船にぶつかってくる。



20年後には日本は無くなる、と中国共産党の首脳たちは豪語する。



この中華人民共和国を、帝国書院は何主義と呼ぶのであろうか。



 また、我が国が、中華人民共和国のこの巨大化する軍事力に対抗する為に、防衛力を増強したら「帝国主義」の国になるのであろうか。



ぜひ帝国書院に聞きたいものである。



そもそも、帝国書院の「帝国主義」という用語の使い方が間違っている。

帝国主義は、「軍事力を背景に他の民族や国家を積極的に侵略し、さらにそれを推し進めようとする政策である。



軍事力を背景に他の民族や国家を侵略した帝国主義国は、



アジア、アフリカを植民地にしたイギリス、フランス、オランダ、ドイツ。



ハワイ、フィリピンを植民地にしたアメリカ。



また、東欧、シベリア、満州を侵略したロシア。



そして現在も、チベット、ウイグル、南モンゴルを武力侵略し、自分の領土にしている中華人民共和国。

これらの国こそ帝国主義の定義に当てはまる国々である。



では日本の場合は、どうか。



 日本は武力で他国を侵略していない。





<台湾の場合>

台湾は日清戦争の結果、日本の領土となったが、日清戦争での日本の目的は朝鮮を清の属国から独立させることであり、台湾を領有することではなかった。



日本はその目的通り、日清戦争の後、朝鮮を独立させた。



他国の属国であった国を独立させる事は、武力で侵略する「帝国主義」の定義には当てはまらない。



だから日本を「帝国主義国」とは呼べない。



日本は他国を独立させたのだから、もし呼ぶとすれば、「帝国主義国」ではなく、「他国独立救済主義国」と呼ばなければならない。



台湾については、日清戦争に負けた清が、下関講和条約において日本に譲ったものであり、日本の侵略ではない。台湾は日清戦争のオマケである。



清にとって価値の無いものを日本に譲ったに過ぎない。



現に、李鴻章は、伊藤博文に対し、台湾を手に入れても山岳地帯の首狩り族や匪賊が跋扈し、疫病やアヘンが蔓延する台湾は、日本にとって厄介者になるだけだぞ、と警告(と言うより皮肉)を言っている。





<朝鮮の場合>

また、帝国書院は、『日本は韓国の植民地化を進め』と日本を非難しているが、日韓併合は日本と韓国との二国間条約であり、日本の武力による侵略ではない。



また、日韓併合は、イングランド、スコットランド、ウェールズの合邦国家であるイギリスと同じであり、スコットランドがイングランドの植民地で無いのと同じように、朝鮮は日本の植民地ではなかった。



また、当時の米英仏も日韓併合に反対していない。



ケンブリッジ大学の国際法学者J.クロフォード教授は「韓国併合条約は、国際法上は不法なものではなかった」と言っている。



実際に、朝鮮においては最大の政党「一進会」が、日本と併合して欲しいと大韓帝国第二代皇帝純宗と大韓帝国政府に対し請願書を出している。また純宗皇帝も日韓併合に賛成し、政府も賛成した。韓国人の本にそう書いてある。



また純宗皇帝は、日韓併合の後、朝鮮王初代李王としてその身分を保障された。



しかるに、ハワイ王国がアメリカ人のクーデターで乗っ取られた時、リリウオカラニ女王は逮捕され、監獄に入れられ、廃位させられた。そしてハワイ王国は消滅した。ビルマ国王はイギリス軍によって処刑され、中華人民共和国に占領されたチベットのダライ・ラマ法王14世はインドに亡命した。





<満洲の場合>

また満州国は、清王朝のラストエンペラー溥儀の希望によって出来た国である。日本に領土的な野心があったなら、満州事変で日本が満州を平定した時、なぜ日本の領土にしなかったか。



ヨーロッパがアジアを侵略したように、アメリカが三流国スペインに戦争を吹っかけスペインの植民地キューバ、グアム、フィリピンを獲ったように、そして現在、中国がチベットやウイグルを軍事占領しているように、なぜ日本は満州を自分の領土にしなかったのか。





また、帝国主義国に征服された国々は、搾取の対象であった。



しかし、台湾、朝鮮、満州は、日本の搾取の対象ではなく、逆に日本は積極的に近代化を推し進めた。そして日本の援助でいち早く工業化に成功し、満州国は飛行機まで作っている。



それは台湾、朝鮮と、大東亜戦争(太平洋戦争)の後、独立したアジア諸国とを比較すれば明らかである。



フィリピン人は言う。

日本が台湾や朝鮮で物作りを教えたのに反して、アメリカ人は自国の製品を我々フィリピン人に買わすだけで、アメリカ人はフィリピン人に物作りを教えてくれなかった。だから、我々が独立しても鉛筆一つ満足に作れない。



満州国は、ソ連、その後、中国に占領されて、共産主義により近代化を止められてしまった。



これらを比較する時、帝国主義の定義が、「武力によって他国を侵略する」というものであれば、日本は、その定義に当てはまらない。



故に、帝国書院は、帝国主義の用語の使い方を間違っている。



中学生を誤解させる帝国書院は、全く評価できない。

評価  -5点





 帝国書院で長引いたので、次に進む。







教育出版    評価  3点

『また、アジアの日本が列強のロシアに勝利した事は、中国やインド、トルコなどの人々に希望を与え、アジア諸国では民族独立や近代化の動きが活発になりました。東アジアでの日本の影響が強まる中で、欧米諸国は、日本の勢力拡大を警戒するようになりました。』p.173



教育出版は、トルコの国名を入れている点は評価出来る。後半では「黄禍論」という歴史用語を使っていないのが惜しまれる。



教育出版は、帝国書院のような帝国主義としての日本批判はない。

評価  3点



東京書籍    評価  2点

『日露戦争での勝利によって、日本は列強としての国際的な地位を固めました。国民の中には、列強の一員になったという大国意識が生まれ、アジアの諸国に対する優越感が強まっていきました。

 一方、欧米列強の圧迫に苦しんでいたインドなどアジアの諸国では、日本にならった近代化や民族独立の動きが高まり、中国では革命運動が急速に活発化しました』(p.165)



 東京書籍は「大国意識が生まれ、アジアの諸国に対する優越感が強まっ」たと、批判的に書いているが、帝国書院のような帝国主義としての日本批判はない。

        評価  2点





清水書院    評価  -5

『日露戦争での日本の勝利は、白人でない民族の国が白人の国を打ち負かしたという点で、ヨーロッパ列強諸国の圧政に苦しむアジア・北アフリカの人々を勇気づけた。しかし、その後の日本のアジアでの振る舞いは、その期待を裏切るものとなった。』(p.193)



 『アジアの期待を裏切った』と言っているのは、清水書院帝国書院2社だけである。



これは、日本がアジアで悪い事をした、日本が悪かった、とする自虐史観であり、日本は帝国主義で悪であるとする歴史の歪曲であり、嘘である。



 それらが嘘である事は、歴史を調べればすぐに判る。



大東亜戦争で日本は欧米列強をアジアから駆逐し、アジア諸国を独立させ、見事に『アジア諸国の期待』に応えているではないか。



このような事実を書かずに、事実に反した嘘を書く清水書院は、中学生に誤った歴史を教えるものであり、全く評価できない。



評価 -5点。









11:【日露戦争で、日本が良い影響意を与えた国と人物】



自由社      評価  5点

国名:フィンランド、ポーランド、トルコ、植民地にされていた諸民族

  人物:孫文、ネルー、ムスタファ・カミール(エジプト人)、シーラーズィー(イラン人)



自由社はヨーロッパの国を入れている。また人物も多い。一番優れている。





育鵬社      評価  3点 

国名:アジア・アフリカ諸国、 

人物:孫文、ネルー



 育鵬社は、ヨーロッパが抜けている。人物も少ない。



日本文教出版   評価  -5点  

国名:無し 

人物:無し



 日本文教出版は、日本が世界に与えた良い影響を一切削除している。

中学生に日本の良い所を教えないという事は一体どういうことか。日本の教科書とは思えない反日教科書である。まったく評価できない。



帝国書院     評価  2点 

国名: アジア諸国、 

人物: 孫文



 帝国書院は、国も人物も少ない。孫文が出ている点だけを評価する。



教育出版     評価  2点

国名: 中国、インド、トルコ、アジア諸国

人物: 無し



教育出版は、人物が居ないが、国名が多い。トルコを載せているので評価。



東京書籍     評価  1点  

国名: 中国、インド、アジア諸国

人物: 無し



 東京書籍は、トルコが抜けている。人物も無し。



清水書院     評価  -2点

国名: アジア・北アフリカ

人物: ネルー

 清水書院は、ネルーを載せるが、ネルーは日本を帝国主義国と批判している。

既に書いたが、ネルーの意見は間違っている。故に評価はマイナスである。







 最後に、教科書に取り上げられなかった例を一つ上げて、「日露戦争」の項の評価を終わりにしたい。

 

 日本勝利の衝撃は、ヨーロッパ、中東、アジア、南北アメリカ、全世界に及んだが、その中で日露戦争がアメリカの黒人に与えた影響を紹介する。



 『日露戦争で熱狂的に日本を支持したのは米国の黒人であった。

(略)

黒人の新聞『ニューヨーク・エイジ』紙は、「日露戦争が有色人種を奮い立たせ、ヨーロッパ人が搾取しているアフリカ大陸も解放されるだろう」と報じた。

(略)

 ハーバード大学で学び、1895年に黒人として最初に博士号を得たウイリアム・EB・デュボイスは、「有色人種が先天的に劣っているという誤解を日本が打破してくれた。日本が有色人種を白色人種の奴隷から救ってくれるので、日本を指導者として有色人種は従い、我々の夢を実現しなければならない」とした。

デュボイスは、雑誌『クライシス』を発行し黒人の人権確立運動の先頭に立った。彼の活動は国内にとどまらず、アフリカ大陸の黒人の人権確立や国家独立運動にも及び、晩年は「アフリカ独立の父」と呼ばれる栄誉を得たが、このような人生をデュボイスに歩ませたのは日露戦争の衝撃であった』

(『日露戦争が変えた世界史』平間洋一、芙蓉書房出版 p.55





以上、評価を終わります。

評価の集計は下表のとおり



《評価の結果集計表》

<><><><><><> <><><><><><>








教    育
年号の表記
3
5
0
0
0
0
5
日露戦争の説明の分量
5
4
0
0
3
1
1
日露戦争の原因
4
5
0
1点
3
0
3
日露の国力の差
5
2
0
2
0
0
3
コラムと資料は十分か
5
5
0
2
2
0
0
日露戦争の描写
5
5
-5
-2
2
2
-2
日本海海戦の結果の説明
5
5
-3
-3
3
-3
3
日露戦争の登場人物の数
5
5
-5
2
1
-2
-1
満州か中国東北部か
5
5
3
3
5
5
5
日露戦争の影響
5
4
3
5
3
2
5
影響を受けた国・人物
5
3
5
2
2
1
2
合 計
52
48
-18
2
21
-4
-10







結 語



 7社の教科書のうち、その内容ははっきりと二組に分かれる。自由社、育鵬社と、他の5社である。



自由社、育鵬社2社は、日露戦争を日本の立場で書いており、内容も詳しく、歴史的人物の数も多い。特にコラムが充実している。



特に自由社は、日露戦争の経緯について7社のうちで一番詳しく書いている。中学生も興味を持って読み、感動する事であろう。

他の5社、日本文教社、教育出版、帝国書籍、東京書籍、清水書院は、内容も登場人物も少なく、さらにコラムも無く、自由社育鵬社に比べ、格段に劣る。



日本文教社、帝国書籍、教育出版、東京書籍、清水書院は、基本的に、日本が侵略国だとして描き、また、幸徳秋水、内村鑑三、与謝野晶子などを出して、反戦の立場から日本を批判的に書いている。一部を取り出して強調し、重要な点を疎かにし、公平さを欠き、偏向していると言わざるを得ない。



これら5社は、世界最大の陸軍国ロシアが極東侵略を行い、小国日本が国家存亡の危機に際し、死力を尽くして独立を守った、という日露戦争の最も肝心な視点が抜け落ちている。



すなわち、日露戦争が日本の自衛戦争であったという点である。この事を中学生に教えない教科書は、失格である。

 

 また、他社が書いていないにもかかわらず、帝国書院清水書院2社だけが、日露戦争後、日本が帝国主義国になったと書いており、2社の特異さが目立つ。欧米列強からアジア諸国を解放した日本が帝国主義国であろうか。



 また、日本文教出版は、一貫して日本を侵略国として描き、日本の誇りとすべき事を全く書いていない。評価すべき点がほとんどない。評価は一番悪い。



以上で、日露戦争について各教科書の比較を終わります。

以上

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